(09/06/20)全曲ルイ・スクラヴィスの作曲ないしは共作。フランスらしいエキゾチックなメロディ、あるいはメカニカルな進行も引きずりながら、エレキ・ベースだし変拍子の曲もあって、M-BASEに近い(実際は無関係なんですが)ようなサウンド。静かな曲もありますが、ECMらしからぬ盛り上がりのある曲も多いのですが、ルイ・スクラヴィス自身が録音のプロデューサーになっているので、それも納得。2人の管楽器がなかなか押し出しの強いフレーズを聴かせてくれます。ピアノレスなので、より自由に動いていく感じです。ほとんど管楽器、時にギターがフレーズを提示しながらファンク的に盛り上がっている曲が目立ち、なかなか面白い。4曲目など民族音楽的な要素も入っているように感じます。彼ららしい空間的なサウンドの場面も。
2019年08月
Hortobagyi/Kurtag Jr./Lengyelfi/Kurtagonals(ECM New Series 2097)
(09/07/22)Gyogy Kultagは20世紀ルーマニア生まれのハンガリーの作曲家ですが、Gyogy Kultag Jrは’54年生まれの息子。作曲はこの3人とFerenc Haaszの計4人でやっていますが、コンピュータ(エレクトロニクス?)やシンセサイザーを使ったシリアスな環境音楽のようなサウンドで、ゆったりしながらも時に派手な音使いと、ドラマチックで意外に骨太なサウンドの展開を聴かせてくれます。New Seriesでなくてもいいくらいの内容です。
Sunrise/Masabumi Kikuchi(P) Trio(ECM 2096)
(12/03/27)全曲3人のインプロヴィゼーションで、日本人ミュージシャンのECMジャズ初リーダー作。そして、ポール・モチアンのレコーディングでもあることもうれしい。ECMらしい、空間表現の多いジャズで、時に少し速めのパッセージもはさんで、なかなかECMファンには惹きつけるものをもっています。ただ、それ以前の菊地雅章の録音をいろいろ知っている身としては、音数の少なさに比例して、エグりとるような緊張感を聴く人に感じさせることは、この場では比較的薄いかもしれません。少し饒舌か。それでも、音数の少ない場のトリオでの表現としては、なかなかのものを持っているし、ここでも鋭さはあると言えますが。ある意味、こういう環境下での演奏としてはかなりいいかもしれません。トリオとしてはなかなかのまとまりです。
Landscapes/Toshio Hosokawa(ECM New Series 2095)
(11/10/11)20世紀から21世紀にかけての日本の現代音楽家、細川俊夫の作品集。’93年から’08年にかけての作品の演奏。笙の宮田まゆみが参加。3曲目が笙のソロで、2曲目がオーケストラのみ、1、4曲目が共演。ECMで日本の音楽家のみが取り上げられるのは初めてです。笙は東洋的なサウンドというよりはオーケストラの中で幽玄にさまよっている感じ。静かな場面が長く続き、時にダイナミックに大きくなります。ECMならでは。
Resonance/Manfred Schoof(Tp, Flh) Quintet(ECM 2093/94)
(09/09/27)CD2枚組。JAPOレーベルの「Scales」(JAPO 60013)と「Light Lines」(JAPO 60019)から全曲、「Horisons」(JAPO 60030)から2曲カットされて収録。Manfred Schoofの作曲はCD1の4-5曲目、CD2の3-4曲目以外の全て。ピアノ関係はJasper Van't Hofがメインで、CD1の7曲目、CD2の4-6曲目のみRainer Bruninghausが担当。’70年代の傍系レーベルの音であっても、当時のECMの基調とするサウンドに通じるものがあって、クインテット編成ながら温度感の低い、なおかつ自由度の高めな、時に盛り上がりのあるサウンドが展開しています。グイグイくるフリージャズ的な曲も。リーダーのトランペットはクリアでやはりその自由なフレーズがなかなか素晴らしい。もう一人のフロントがバス・クラリネットなのも印象的。
Life's Backward Glances - Solo And Quartet/Steve Kuhn(P)(ECM 2090-92)
(08/11/22)Ecstacy(ECM 1058)’74年、Motility(ECM 1094)’77年(未CD化)、Playground(ECM 1159)’79年(未CD化)を3枚組BOXで再発しました。Ecstacyは再CD化のため割愛します。タイトル曲は5曲目とPlaygroundの6曲目で、フリーで耽美なピアノです。Motilityは普通のクァルテット編成ですが、耽美的で美しい演奏と、活発で先鋭的な演奏、8ビート、サンバなどさまざま。後におなじみの2曲目もあり、アップテンポの4ビートの6曲目。このCDの3、8曲目のみハーヴィー・シュワルツ作曲、残りの曲は3枚ともにスティーヴ・キューン作曲。Playgroundはヴォイスもあるトリオで、厳かさやエキゾチックな感じもあり。繊細さはこのCDも少し強めですが、4ビートの部分も(2曲目後半)。Motilityにもある「Deep Tango」がここにも。
One Dark Night I Left My Silent House/Marilyn Crispell(P, Soundboard, Per)/David Rothenberg(Bcl, Cl)(ECM 2089)
(10/05/31)全曲2人の作曲なので、フリー・インプロヴィゼーションを通しているのか。タイトルはついているけれども、連続した情景描写のような淡々とした音楽。ピアノとバス・クラリネット(クラリネット)という編成で、研ぎ澄まされたサウンドが繰り広げられています。聴く人にある程度の緊張感を強いる場面もあるかもしれませんが、ゆったりした感覚の時もあります。その語り合いが、ECMならではの、そしてまさに2人だけの世界を繰り広げています。またピアノだけではなくて、サウンドボードやパーカッションとのやり取りは少し活発になって、これらの曲はある程度の躍動感も出てきます。全開とまではいかなくても、5、9、11曲目のようにいかにもフリーのような曲も。7曲目など作曲されたようなメランコリックな曲もありますが。
Diminuito/Rolf Lislevand(Lutes, Vihuela De Mano)(ECM New Series 2088)
(09/11/13)16世紀の作曲家の古楽、あるいは作曲者不詳の曲をRolf Lislevandがアレンジをして、古楽器で聴かせています。当時の音楽をそのまま聴かせるような楽譜は残っていないと思われるので、言わば再現なのですが、なかなか雰囲気は出ています。奏法には詳しくないですが、現代的味付けやフレーズも場面によってはあるように思われます。ちょっとエキゾチックで、速いパッセージもあったりと、なかなか新鮮に聴けるサウンド。
Far Side/Roscoe Michell(Sax, Fl) And The Note Factory(ECM 2087)
(10/10/13)ライヴ。全曲ロスコー・ミッチェルの作曲。かなりフリーに近い作品だし、スティーヴ・レイクのアルバム・プロデュースが入っているので、ECMとしてはけっこう硬派。基本は2ピアノ、2ベース、2ドラムスのようです。1曲目は31分ほどあって、出だしの部分が流れていくような静かなフリー、そして、訥々とした内省的なフレーズが静かな中に続いていき、中盤以降ギャロンギャロンと延々と盛り上がりがあって、これでもか、とフリーで攻めていきます。間合いのある唐突なテーマから、静かで重厚なやり取りが続いて徐々に盛り上がる2曲目、語りあいのフレーズが続いていくような、静かな無機的なフレーズが応酬していく3曲目、前後にややアピールするテーマを持ってきて、中盤部には混沌としつつ盛り上がる部分もある4曲目。
Cartography/Arve Henriksen(Tp, Voice, Field Recording)(ECM 2086)
(08/11/16)Arve Henriksenと他のメンバー達の共作が多い。生音一発ではなくて、サンプラー、Field Recordingの多用によって、制作にけっこう時間がかかっているのではないでしょうか。なので珍しく録音年月が書いてありません。Henriksenは尺八の要素もあるような、ある種独特のサウンドのトランペットを吹く人ですが、ここでは淡々と吹く環境に合わせて、バックの音も、時にある程度人工的にもなったり、ヴォイスも入ったりしながら、ECMらしさを失っていない統一されたサウンドになっています。最近多くなっているサンプラーの使用も、北欧のミュージシャンらしく、手馴れたもの。ゆったりとドラマチックに悠久の時が流れていくような、それでいて温度感が低いサウンド。インプロヴィゼーションを時間をかけて積み重ねた感じ。