(09/09/06)全16曲中、10曲(2-4、8-9、11-13、15-16曲目)がヤン・ガルバレク作曲。再演曲もあります。CD2枚組で、ライヴの演奏。静かでエキゾチックな曲が多いですが、エレキ・ベースとマヌ・カッチェのドラムスを交えたワン・ホーン・クァルテットなので、曲によっては意外にECMらしからぬ、リズミックで外向的なサウンドになることも(特に1曲目、7曲目後半、11、13-15曲目)。ガルバレクはそれにおかまいなしで、マイペースでサックス(時にフルート)を吹いていますが。相変わらず明るくて透明度の高い音色とフレーズ、そして時にミステリアス。スムース・ジャズに行くことなく、ECMの土俵で時に心が洗われるようなホーンが、なかなか印象的。変幻自在なバンドサウンド。時に長めのボトムのソロもいい感じ。
カテゴリ: ECM2051-2101番
Mostly Coltrane/Steve Kuhn(P) Trio w/Joe Lovano(Ts, Tarogato)(ECM 2099)
(09/07/01)ジョン・コルトレーンの作品とそのゆかりの曲の演奏が中心。スティーヴ・キューンの作曲も9、13曲目に。オリジナルがメインではないのはキース・ジャレット以外では珍しい。テンポが曖昧な進行の曲、静かなサウンドの曲が多いですが、2曲目の中盤部ではしっかり4ビートの演奏だし、5曲目は時にアップテンポの4ビートの元気な曲。8曲目はベースゆったり、曲は元気です。10曲目は激しいフリー。ジョーイ・バロンのドラムスも、なかなか鋭さを見せています。それにしてもリーダーの影響か、曲によっては耽美的なバラードの情景。ジョー・ロバーノのテナー・サックスも、コルトレーンとはタイプが違うはずなのに、不思議とマッチしていますし。でも12曲目はモーダルな8分の6拍子で、コルトレーンを彷彿とさせます。
Lost On The Way/Louis Sclavis(Cl, Bcl, Ss)(ECM 2098)
(09/06/20)全曲ルイ・スクラヴィスの作曲ないしは共作。フランスらしいエキゾチックなメロディ、あるいはメカニカルな進行も引きずりながら、エレキ・ベースだし変拍子の曲もあって、M-BASEに近い(実際は無関係なんですが)ようなサウンド。静かな曲もありますが、ECMらしからぬ盛り上がりのある曲も多いのですが、ルイ・スクラヴィス自身が録音のプロデューサーになっているので、それも納得。2人の管楽器がなかなか押し出しの強いフレーズを聴かせてくれます。ピアノレスなので、より自由に動いていく感じです。ほとんど管楽器、時にギターがフレーズを提示しながらファンク的に盛り上がっている曲が目立ち、なかなか面白い。4曲目など民族音楽的な要素も入っているように感じます。彼ららしい空間的なサウンドの場面も。
Hortobagyi/Kurtag Jr./Lengyelfi/Kurtagonals(ECM New Series 2097)
(09/07/22)Gyogy Kultagは20世紀ルーマニア生まれのハンガリーの作曲家ですが、Gyogy Kultag Jrは’54年生まれの息子。作曲はこの3人とFerenc Haaszの計4人でやっていますが、コンピュータ(エレクトロニクス?)やシンセサイザーを使ったシリアスな環境音楽のようなサウンドで、ゆったりしながらも時に派手な音使いと、ドラマチックで意外に骨太なサウンドの展開を聴かせてくれます。New Seriesでなくてもいいくらいの内容です。
Sunrise/Masabumi Kikuchi(P) Trio(ECM 2096)
(12/03/27)全曲3人のインプロヴィゼーションで、日本人ミュージシャンのECMジャズ初リーダー作。そして、ポール・モチアンのレコーディングでもあることもうれしい。ECMらしい、空間表現の多いジャズで、時に少し速めのパッセージもはさんで、なかなかECMファンには惹きつけるものをもっています。ただ、それ以前の菊地雅章の録音をいろいろ知っている身としては、音数の少なさに比例して、エグりとるような緊張感を聴く人に感じさせることは、この場では比較的薄いかもしれません。少し饒舌か。それでも、音数の少ない場のトリオでの表現としては、なかなかのものを持っているし、ここでも鋭さはあると言えますが。ある意味、こういう環境下での演奏としてはかなりいいかもしれません。トリオとしてはなかなかのまとまりです。
Landscapes/Toshio Hosokawa(ECM New Series 2095)
(11/10/11)20世紀から21世紀にかけての日本の現代音楽家、細川俊夫の作品集。’93年から’08年にかけての作品の演奏。笙の宮田まゆみが参加。3曲目が笙のソロで、2曲目がオーケストラのみ、1、4曲目が共演。ECMで日本の音楽家のみが取り上げられるのは初めてです。笙は東洋的なサウンドというよりはオーケストラの中で幽玄にさまよっている感じ。静かな場面が長く続き、時にダイナミックに大きくなります。ECMならでは。
Resonance/Manfred Schoof(Tp, Flh) Quintet(ECM 2093/94)
(09/09/27)CD2枚組。JAPOレーベルの「Scales」(JAPO 60013)と「Light Lines」(JAPO 60019)から全曲、「Horisons」(JAPO 60030)から2曲カットされて収録。Manfred Schoofの作曲はCD1の4-5曲目、CD2の3-4曲目以外の全て。ピアノ関係はJasper Van't Hofがメインで、CD1の7曲目、CD2の4-6曲目のみRainer Bruninghausが担当。’70年代の傍系レーベルの音であっても、当時のECMの基調とするサウンドに通じるものがあって、クインテット編成ながら温度感の低い、なおかつ自由度の高めな、時に盛り上がりのあるサウンドが展開しています。グイグイくるフリージャズ的な曲も。リーダーのトランペットはクリアでやはりその自由なフレーズがなかなか素晴らしい。もう一人のフロントがバス・クラリネットなのも印象的。
Life's Backward Glances - Solo And Quartet/Steve Kuhn(P)(ECM 2090-92)
(08/11/22)Ecstacy(ECM 1058)’74年、Motility(ECM 1094)’77年(未CD化)、Playground(ECM 1159)’79年(未CD化)を3枚組BOXで再発しました。Ecstacyは再CD化のため割愛します。タイトル曲は5曲目とPlaygroundの6曲目で、フリーで耽美なピアノです。Motilityは普通のクァルテット編成ですが、耽美的で美しい演奏と、活発で先鋭的な演奏、8ビート、サンバなどさまざま。後におなじみの2曲目もあり、アップテンポの4ビートの6曲目。このCDの3、8曲目のみハーヴィー・シュワルツ作曲、残りの曲は3枚ともにスティーヴ・キューン作曲。Playgroundはヴォイスもあるトリオで、厳かさやエキゾチックな感じもあり。繊細さはこのCDも少し強めですが、4ビートの部分も(2曲目後半)。Motilityにもある「Deep Tango」がここにも。
One Dark Night I Left My Silent House/Marilyn Crispell(P, Soundboard, Per)/David Rothenberg(Bcl, Cl)(ECM 2089)
(10/05/31)全曲2人の作曲なので、フリー・インプロヴィゼーションを通しているのか。タイトルはついているけれども、連続した情景描写のような淡々とした音楽。ピアノとバス・クラリネット(クラリネット)という編成で、研ぎ澄まされたサウンドが繰り広げられています。聴く人にある程度の緊張感を強いる場面もあるかもしれませんが、ゆったりした感覚の時もあります。その語り合いが、ECMならではの、そしてまさに2人だけの世界を繰り広げています。またピアノだけではなくて、サウンドボードやパーカッションとのやり取りは少し活発になって、これらの曲はある程度の躍動感も出てきます。全開とまではいかなくても、5、9、11曲目のようにいかにもフリーのような曲も。7曲目など作曲されたようなメランコリックな曲もありますが。
Diminuito/Rolf Lislevand(Lutes, Vihuela De Mano)(ECM New Series 2088)
(09/11/13)16世紀の作曲家の古楽、あるいは作曲者不詳の曲をRolf Lislevandがアレンジをして、古楽器で聴かせています。当時の音楽をそのまま聴かせるような楽譜は残っていないと思われるので、言わば再現なのですが、なかなか雰囲気は出ています。奏法には詳しくないですが、現代的味付けやフレーズも場面によってはあるように思われます。ちょっとエキゾチックで、速いパッセージもあったりと、なかなか新鮮に聴けるサウンド。