’01年に最初の「ECMの真実/稲岡邦彌著」(河出書房新社刊)がでて、それが好評だったらしく、’09年に「増補改訂版 ECMの真実」が出ました。もう’00年代頭には私はECMのCDの追っかけだったので、これらは全て読んでいます。そこで、今回は発行元を代えて「新版 ECMの真実」(カンパニー社刊)が出ました。内容は増えたところもあって大幅に変わっていて、新たに200ページほど増ページです。そして、本のデザインも良くなったし、意外にコンパクトなサイズで、しかも本文が縦書きから横書きに変更され、ジャケ写などの写真も白黒ですが適宜入れるというこだわりの作りになっています。それだけでもECMのファンには買う価値があるのでは、と思います。
手元に届いたのは、実は20日の昼のことで、増補改訂版と見比べながら、まず内容が変わったところから読み始めてますが、なかなか面白い。第5章に、時間が経っているので新たな記事が加わっていたり、「第7章 対話」「第8章 エッセイ広告」が全く新しい、増えたところの記事となっています。もしかすると、他の部分にも手が加わっているのかもしれませんが、とりあえずは大きなところの紹介を。対話はミュージシャン等への長めのインタビューで、なかなか興味深いです。エッセイ広告はECM初期に、「ユリイカ」「カイエ」の詩の雑誌に詩人や作家がECMについて語る広告を掲載するという、貴重な資料になってます。まだ読書は全部は進んでないのと、あまりネタバレは良くないので、この辺まで。
私もいちおうECMの全部聴きの経験は、何十年もかけてつい先日達成したばかりですし、その経験で「ジャズCDの個人ページ ECM Blog」を作っていますが、あくまでも聴いてどういうアルバムかを紹介するにとどめ、批評や論評など、そこまで深く掘り下げて語っているわけではないので、このような今に至るまで記述のある書籍が出るのを、心待ちにしていました。ましてやECMの初期の頃にディストリビューターとして深く関わり、その後も御活躍している稲岡さんのような方がこういう本を出してくれているので、そこでさらに知識を深めることができます。今回の本の価格は税込み4,180円ですが、迷わずに買いました。この本を先に読んでいたら、もしかしたらECMのCDの処分はしなかったかもしれないなあ、とも思います。置き場所の問題と、今はストリーミングでも聴ける、という短絡的な問題でしたし。ECMファンにはおすすめの1冊です。