(08/04/05)民族的な雰囲気のあるヴォーカルアルバム。6、10曲目がフリー・インプロヴィゼーション、5、9、13曲目はKamil Hodjaの吟唱に基づく作曲となっています。作曲もMarc Sinanが関わっているのは、1、5-6、9-10、13曲目で、他はJulia Hulsmannの曲が多いです。ギターはクラシック・ギターを使用していて、サウンド的にもゆったりとしたクラシック的な弾き方。テクニックよりもサウンドの味わいを聴かせるタイプか。西洋音楽と国籍不明の民族音楽風味が加わり、淡いエキゾチックさが漂っています。それでいて温度感の低い透明感のある空間と音の切り取りの鋭さがあるサウンド。60分間で14曲あり、ヴォーカルが中心になっているので、楽器の演奏はやや脇役にまわりがち。曲によってはフレーズの速いものも。
カテゴリ: ECM2051-2101番
The Astounding Eyes Of Rita/Anouar Brahem(Oud)(ECM 2075)
(09/10/31)全曲アヌアル・ブラヒムの作曲。哀愁を帯びたいつものイスラム世界と西洋音楽との折衷サウンドが印象的ですが、珍しく明るいサウンドの曲調の曲もあり。管楽器がバス・クラリネットなのがエキゾチックです。そのエキゾチックさとECMらしさを満喫できるのが、彼の曲調で作曲された1曲目、彼の明るい面を聴くことができるけど憂いもあったりする16ビート調の2曲目、ちょっとリズミカルで明るい不思議なサウンドを奏でる3曲目、哀愁が強いながらもある程度賑やかに進んでいくタイトル曲の4曲目、中盤パーカッションが効いてリズミカルかつエスニックな5曲目、少し憂いの帯び加減の静かなミディアム・ファンクの6曲目、静かにやや明るい世界をさまようような7曲目、エスニック色が強いながらリズミカルな8曲目。
Bernd Alois Zimmermann/Canto Di Speranza(ECM New Series 2074)
(08/12/06)Bernd Alois Zimmermannは20世紀ドイツの現代音楽家。オーケストラとの共演で、1-3曲目がヴァイオリン、4曲目がチェロ、5曲目はナレーションとバス(ヴォーカル)をフィーチャーした曲です。1-4曲目が’50年代5曲目が亡くなる’70年の作曲。ほんの少しクラシック感も残しつつ、現代音楽の特徴をけっこう前面に出している50年代の曲と、36分にもわたり2人のナレーションとバスが主役の、オペラのようなラストの曲。
Remembering Weather Report/Miroslav Vitous(B) Group w/Michel Portal(Bcl)(ECM 2073)
(09/06/21)2曲目がオーネット・コールマン作で他の曲はミロスラフ・ヴィトウスの作曲。ただし1曲目はウェイン・ショーターの曲の変奏曲で、「ネフェルティティ」が顔を出しています。ウェザー・リポートのトリビュート性はあまり関係ないような気がしていて、空間の中にヴィトウスの今が垣間見えるというところでは。緊張感のある「ネフェルティティ」が自由に展開していて、各楽器が絡み合っている1曲目、テンポの感覚がややあいまいなままゆったり進んでいく2曲目、スペイシーな中でソロかテーマか曖昧なまま各楽器が登場していく13分台の3曲目、ミシェル・ポルタルとの寄り添いながら緊張感のあるデュオの4曲目、空間的ながらもベースのアルコ奏法で超絶技巧が聴ける5曲目、ブルースと言うにはかなり自由な演奏の6曲目。
Stefano Scodanibbio/Reinventions(ECM New Series 2072)
(13/05/19)Stefano Scodanibbioは20世紀後半から21世紀にかけてのイタリアの音楽家。ここではバッハ、スペインやメキシコ関係の音楽よりインスパイアを受けたアルバムとしてます。1、6、12曲目はバッハよりインスパイアされた音楽、2-5、7-11曲目はそれぞれ元の作曲家の名前が書いてあります。現代音楽ではなくて、どちらかというと古典的な雰囲気でのクァルテット。こういう演奏も他ではなさそうなので、ここではありかと思う。
Ambrose Field(Comp, Live and Studio Electronics)/Being Dufay/John Potter(Tenor)(ECM New Series 2071)
(09/02/23)15世紀にイタリアで活躍した作曲家のギョーム・デュファイのヴォーカルの断片を元に、Ambrose Fieldが作曲、演奏したもの。クラシックの楽器ではなく、エレクトロニクスなどを多用していて、素材が素材でなければ、音響的でアンビエントな音楽の部類だったかもしれません。流れるサウンドはこれぞエレクトロニクス使用という感じ。ジョン・ポッターのテナーは中世のヴォーカル曲の香りを漂わせています。ECMならではの録音。
Eleni Karaindrou/Dust Of Time(ECM New Series 2070)
(09/02/22)サブタイトルに「Music For The Film By Theo Angelopoulos」とあって、いつもエレニ・カラインドルーが映画のサウンドトラックを作っている監督の作品の音楽を作曲。映画音楽なので、46分ほどに19曲詰まっています。彼女の持ち味を生かした短調の哀愁をいっぱいたたえた、悲しみを基調とする、エレニならではの作品に仕上がっています。編成も1人から数人の小編成のものから、オーケストラを使ったものまで、いろいろ。
Monograph/Nils Okland(Hardanger Fiddle, Vln, Viola D'amore)(ECM 2069)
(09/03/30)ノルウェーのヴァイオリニストの初リーダー作にしてソロ作品。全曲Nils Oklandの作曲。ジャンル別には、実際にはインプロヴィゼーションがあるにしろ、サウンド的にはジャズではなくてクラシックや古楽、あるいは民族音楽の色合いがかなり強い作品。ヴァイオリンだけではなく、民族楽器(Hardanger Fiddle)や古楽器(Viola D'amore)も使用していて、変化に富んでいます。ただし、こういった弦楽器のソロ作品のため、もちろん持続音が中心であり、音が高めの音域に集中していて、かなり空間的な演奏になっています。かなりECMらしい作品と言えばいいのか。ゆったりとしつつも薄暮の風景と北欧の民族音楽の面影のある旋律があり、異国の空間に入り込んだ感じはかなり強いです。聴く人を選ぶ、ECM独自の情景。
Profumo Di Violetta/Gianluigi Trovesi(Cl, Sax) All'Opera(ECM 2068)
(08/11/12)オーケストラとの共演で、Gianluigi Trovesi(1、3-5、7-8、11-12、14、16-17、19、21(共作)曲目)の曲と、16世紀から20世紀に至るさまざまな作曲家の曲(クラシックですね)、作者不詳の曲などが混ざり合って、全体としては正当派なクラシックのアルバムを聴いている雰囲気です。ジャズ的なインプロヴィゼーションもあるのでしょうが、クラシックのサウンドの中に取り込まれている感じ。曲によっては、古い曲などはオーケストラ用のアレンジが施されています。17曲目ではクラシックからはみ出たようなサウンドもありますが、やはり全体的にはオーソドックスなクラシックという雰囲気のサウンドかと思います。19、23曲目のサックスはそれでも自己主張が強い感じ。不思議なクラシック寄りのアルバム。
Sky & Country/Fly(ECM 2067)
(09/04/12)ECMにしては異色の参加者のピアノレストリオ。曲は全曲メンバーの作曲でマーク・ターナー作が4曲(3、5-6、9曲目)、ラリー・グレナディア作が2曲(4、8曲目)、ジェフ・バラード作が3曲(1-2、7曲目)。タイトル曲はバラード作なので、彼が中心か。このメンバーならバリバリと突き進む曲ばかりできるのだろうけど、ECMらしく空間を生かしながら淡々と進むような曲が多いです。漂って流れる雰囲気の曲も、ちょっとアップテンポの元気な曲もあります。ボトムはブラッド・メルドーのリズム陣と同じなので、やはり緊密度はあるし、変化に富んだフレーズを軽々とやってしまってます。静かな面が表に出ながらも、3人がそれぞれ内側を向いたり外側を向いたり、聴く人を飽きさせません。自由に飛翔している3人の演奏。