(09/06/20)エヴァン・パーカーのエレクトロ・アコースティック・アンサンブルの4作目。毎回ちょっとづつ参加者は違います。エレクトロニクスとアコースティックの楽器のアンサンブルと言いつつも、サウンドは非イディオム系が中心のフリー。全曲エヴァン・パーカーの作曲とは言いつつも、フリー・インプロヴィゼーションのように聴こえます。ただ、エレクトロニクス系は用意周到な事前準備が必要だと思うので、けっこう手間がかかっているとは思います。グループ名どおり、両者の融合が、一体感があって素晴らしい。だけど聴く人によっては何が何だか分からない67分間になる可能性もあります。ここでは日本の楽器も出てくるのですが、少しの間判別できる程度。ジャケットに集団で演奏している写真があり、かなり大掛かりです。
カテゴリ: ECM2051-2101番
Neharot/Kim Kashkashian(Viola)(ECM New Series 2065)
(09/09/06)イスラエルとアルメニアにゆかりのある、主に20世紀以降の作曲家の演奏。録音日時も作曲家もまちまち。その中のひとりティグラン・マンスリアンはアルメニアの作曲家ですが、生まれはベイルート。同じアルメニアのコミタスの3曲目のみ、キム・カシュカシャンは参加せず、ティグランのピアノソロ。現代音楽ではありますが、1曲目はヴォイスも入って、よりイスラエル的な民族音楽的なサウンドです。7曲目はどことなく哀愁が。
New York Days/Enrico Rava(Tp)(ECM 2064)
(09/01/31)2、9曲目のフリー・インプロヴィゼーションを除き全曲エンリコ・ラヴァの作曲。ニューヨークのアヴァター・スタジオでの録音ですが、ECMとしての温度感の低い、静かな基調のサウンドが漂います。ただ、曲によりほんのり温かかったり、テンポのいいものも。ブロウをしている場面も少しありますが、基本的に相変わらず湿り気を帯びた哀愁のトランペッターで、各楽器が繊細なメロディやフレーズを出しつつ、それに寄り添うように、時に緊張感をはらみ進んでいきます。インプロヴィゼーションの2、9曲目も、割と落ち着いたやりとりで、作曲されたようなまとまりも感じます。むしろ作曲された3曲目がアップテンポの4ビートも時にあり、活発にフリーのやり取りをしているようで面白い。6曲目は温かくて、4ビートもあります。
Snow/Stephan Micus(All Instruments)(ECM 2063)
(08/07/02)全曲ステファン・ミクスの作曲で、1人多重録音。彼のこのスタイルもJAPO、ECMレーベルと続けて何枚も出ています(通算18枚目)。使用楽器も民族楽器が多く、Doussn' Gouni, Duduk, Maung, Gong, Tibetan Cymbal, Bavarian Zitar, Sinding, Guitar, Hammered Dulcimer, Voice, Charango, Nay, Bass Dudukと特殊な楽器で独特な無国籍的民族音楽を奏でています。ジャズ度は当然なく、民族音楽とヒーリングの間を行くような淡々としたサウンドの曲が続きます。そういう意味ではECM的すぎるくらいにECM的。1曲目のタイトル曲も、タイトルを見てなるほどそうかなあ、と思う感じ。使用楽器が各曲で違うので、そのサウンドから思い浮かべる心象風景も徐々に違ってくる感じがあります。どことなく懐かしさがあります。
Movements In Colour/Andy Sheppard(Ss, Ts)(ECM 2062)
(09/04/13)全曲Andy Sheppardの作曲。シンセサイザー無しなので、流れるような音はエフェクトのかかったギターかエレクトロニクスなのでしょうか。ドラムスではなくてパーカッションなのでエスニックな雰囲気を増します。サックスの自由度が高いながらもゆったりした場面から、ビートの効いた中盤以降、強い哀愁とエスニックさを感じながらノリも良い14分台もの1曲目、リズミカルで明るいメロディが続いていく2曲目、パーカッションのビートが効いた中をサックスその他の楽器が泳ぐ3曲目、ギターの伴奏が中心のしっとりとしたバラードを奏でる4曲目、少しゆったりめに明るく淡々と進む5曲目、メロディアスなまろやかエスニック・フュージョンという感じのサウンドの6曲目、少し沈んだ色合いの中を各楽器が漂っていく7曲目。
Othmar Schoeck/Notturno(ECM New Series 2061)
(09/11/13)Othmar Schoeckは20世紀スイスの現代音楽家。ここでは歌曲が収められていて、19世紀の詩人Nikolaus LenauとGottfried Kellerの詩が取り上げられています。Notturnoの曲は1931-33年の作曲。ロマン派と言われていますが、曲調からすると現代音楽とクラシックの間にあるような感じのサウンドです。バリトン(Christian Gerhaher)が歌っていますけど、メロディや音程などそう簡単には歌えないだろうなあ、と思うプロの世界。
Yesterdays/Keith Jarrett(P)/Gary Peacock(B)/Jack DeJohnette(Ds)(ECM 2060)
(09/01/31)’01年東京でのコンサート。ラストの曲のみサウンド・チェック・レコーディングで、曲の最後に会話まで入っています。8曲目出だしの「イントロ」を除き、スタンダードやジャズメン・オリジナルです。以前出た「Always Let Me Go」が同じ来日公演の即興演奏集だったので、それと対をなすスタンダード集になると思います。こちらは温かいサウンドで4ビートもごく当たり前に出て、リラックスして演奏を聴くことができます。その分スゴみは少なくなりますが、アプローチの仕方もテンポも曲によっていろいろだし、相変わらずレベルの高いトリオには違いありません。タイトル曲の3曲目はバラードで静かだけれども、ちょっと自由なフレーズの部分もあって味わい深い演奏です。ラストはサウンドチェックでもクォリティの高い演奏。(09年1月21日発売)
The Door/Mathias Eick(Tp, G, Vib)(ECM 2059)
(08/06/29)全曲Mathias Eickの作曲。オーヴァーダブも施されているような記述が。エレキベースを使っていますが、北欧的な静けさもある、流れていくような曲が多いです。静かな出だしから徐々に盛り上がったり引くところは引いて進むタイトル曲の1曲目、静かなファンクという感触も持っている、情念もある、割とシリアスな2曲目、映画音楽のような哀愁のあるバラードが美しい3曲目、明るめの牧歌的なサウンドが広がりつつ、時に緊張感のあるフレーズが混ざる4曲目、なだらかなサウンド風景が広がっていくノンビートで進行する5曲目、哀愁を感じさせながら徐々に盛り上がったり静かになったり楽器が絡みながら進む6曲目、たゆたうような静かなトランペットが心に響く7曲目、さらに静かにピアノとの語らいを見せる8曲目。
Dans Les Arbres/Xavier Charles(Cl, Harmonica)/Ivar Grydeland(G, Banjo, Sruti Box)/Christian Wallumrod(P)/Ingar Zach(Per, Bass Drum)(ECM 2058)
(08/06/24)全曲が全員の作曲、というよりは、フリー・インプロヴィゼーションか。ジャズというよりは非イディオム系の割と穏やかな実験的現代音楽という感じのサウンドが延々続いていきます。ゴ~ン、ゴ~ンという音が続いていく印象も。聴く人は曲ごとの印象よりも、音の発する流れに沿って、非楽曲的に続いていく音を、楽しむというよりは受け止めていく作業に近い感触を持ちます。時にメロディも出てきますが、希薄な感じです。アコースティック楽器でエレクトロニクスを意識したようなサウンドとも言えるか。プロデューサーがDans Les Arbres(何とアルバムタイトル)なので、ちょっと変わったアルバム。ハードコアではないけれど難解、それでもECM的な調和感覚があるところは立派。それでも聴く人を選ぶアルバムでしょう。
Songs Of An Other/Savina Yannatou(Voice)/Primavera En Salonico(ECM 2057)
(08/08/31)5、11曲目が共作によるオリジナルだけれどもギリシャのトラディショナルに基づくもので、他の曲は、ギリシャを中心に、アルメニア、ブルガリア、セルビア、カザフスタン、アルバニア、イタリアなどのトラディショナルの演奏。当然ジャズ色は薄いです。相変わらず西欧と中東の間にある地の歌を歌っているヴォイスはエキゾチックで、その地にあるかのように民族音楽を繰り広げています。曲によってはけっこう哀愁度と民族度が高く、メロディも妖しげな雰囲気もあり、リズムもあの地域独特なものも。ただ、歌い継がれてきただけに、歌いやすさと覚えやすさはあるかもしれません。3、9曲目のように大らかでやや静かな曲もあり、変化に富んでいます。ただ、オリジナルの方はインプロヴィぜーションの緊張感もあります。